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1 賢治:04/05/11 16:00 ID:jr6EUfZN
その年の桜もまた綺麗だった・・。
いや・・ただ格別に忘れられぬ桜となったからそう想うのかも知れない。
すべてはあの日から始まったのだから・・・

「私、出て行こうと思うんだけどいいかな・・」
後部座席ではしゃぐ子供達の声をかきわけるように耳にとびこんで来た・・
「出て行くって・・子供達はどうするんだよ」
動揺をはっきり認識する前に即座に投げ返した。
「子供はみんな置いて行こうと思うの」

窓の外を走る桜並木をじっと見つめながら妻が言った・・
「そうか・・・そうだろうな」
努めて感情を押し殺しながらそう答えるのが精一杯だった・・。
今の自分はどんな顔をしているのだろう・・
心の動揺を抑え、自分の自尊心を守るべく冷静に会話を続けよう・・そう考えながらハンドルを握る手に力がギュッと力が入った。
・・・・・三十代半ばで向かえる人生の転機であった。

3 賢治:04/05/11 16:22 ID:jr6EUfZN
一歳になったばかりの末娘を抱き上げながら
「お母ちゃんな、この家を出て行くらしいぞ」
そう子供達に事実のままに伝えた。
そうしようという事だけは決めていた事だが一人々々の顔を見る事は出来ず・・ わけもわからずはしゃぐ末娘をあやすフリをした・・。
「えっじゃあもう・・お母ちゃんと会えなくなるの!?」
と次男坊が反応した。一瞬七人の子供の眼が・・末娘を高く抱き上げる私の横顔につきささった。
「そんなわけはないよ。会いたい時には会いに行けばいいし・・お母ちゃんがいいっていうなら泊まりに行けばいいさ」
極々日常の会話の様に普通にこたえた。